奄美大島に生息する国の特別天然記念物アマミノクロウサギについて、奄美市教育委員会文化財課主事の平城達哉さん(26)らが2007年度から10年間の輪禍死(ロードキル)の発生状況をまとめた。同島のロードキルの確認件数は113件で、確認された死亡個体数の22・6%と死亡原因の最多を占めた。発生場所は島の中南部が8割超を占め、秋から冬に多い傾向がみられた。平城さんは「データを基に事故防止の重点区間を設けるなど対策を強化してほしい」と呼び掛けている。
環境省奄美野生生物保護センターが確認した死亡個体数と、県教育委員会大島教育事務所の天然記念物の滅失届の情報を基にロードキルの発生場所や時期を検証し、17年12月発行の日本哺乳類学会誌に論文を発表した。
奄美大島5市町村で10年間に、アマミノクロウサギの死亡個体が確認されたのは499件。最多のロードキルに次いで、野生化した猫(ノネコ)や犬(ノイヌ)に捕殺されたとみられるものが50件で、336件は死因不明だった。
ロードキルの市町村別の発生件数は、瀬戸内町が44件と最も多く、奄美市38件、龍郷町15件、大和村9件、宇検村7件と続く。
主な発生地点は、国道58号線の奄美市住用町と瀬戸内町を結ぶ網野子峠が28件と最も多く、住用町の三太郎峠(市道三太郎線、同スタル俣線)で計18件、住用町役勝と瀬戸内町篠川を結ぶ県道612号線で14件、住用町役勝と宇検村湯湾を結ぶ県道85号線で13件だった。網野子峠では網野子トンネルが開通した15年3月以降、ロードキルは確認されていない。
発生時期は繁殖のためクロウサギの活動が活発になる9~12月に急増し、6~8月に少ない傾向がみられた。
奄美大島では近年、マングースの駆除が進んでクロウサギの個体数が回復し、分布域の拡大傾向がみられる。一方でロードキル被害も増えており、環境省によると17年は過去最多の26件に上った。
平城さんは「これまでに記録がなかった場所でも近年になってロードキルが確認されている」と指摘し、「地元の人がいないと思っている所に生息しているかもしれない。夜間の運転には気を付けてほしい」と呼び掛けている。