奄美大島の海底で「ミステリーサークル」と呼ばれる幾何学模様の円を砂地に作るアマミホシゾラフグについて、大阪大学と千葉県立中央博物館分館海の博物館の共同研究グループは、小さなフグが精巧な模様を作る原理の一端を解明したと8月17日付の英国科学誌のオンライン版で発表した。
アマミホシゾラフグは奄美大島周辺に分布する体長約10センチの小型のフグ。水深12~30メートルの砂底で、放射状の溝が並ぶ直径約2メートルの複雑な構造の円を作る。瀬戸内町の大島海峡で2011年に発見され、シッポウフグ属の新種として14年に命名された。背中の斑点が奄美の星空のように見えることが名前の由来。15年に生物学の研究者が選ぶ「世界の新種トップ10」に選ばれた。
これまでの研究で、サークルは雄が雌をおびき寄せるために作る産卵床であることが分かっていたが、精巧な模様の構造物がどのように作られるのかなど生態には謎が多い。
この謎を解明するため、大阪大学の情報科学研究科など三つの研究科が連携するヒューマンウェアイノベーション博士課程プログラムの研究者らと、アマミホシゾラフグ研究の第一人者として知られる千葉県立中央博物館分館海の博物館の川瀬裕司主任上席研究員が2014年に共同研究に着手した。
研究グループは、奄美大島の海底で撮影したフグがサークルを作る様子のビデオ映像を基に、計算機シミュレーションによって正確な構造を作る仕組みを解析。特にサークル外側の放射状に並ぶ溝について、初期にはあいまいな形をしているが、フグが中心に向かって繰り返し直線的に掘り進むことで、次第に正確な放射構造ができることが分かった。
今回の研究について研究グループの大阪大学大学院生命機能研究科の近藤滋教授は「動物行動学者と、分野の異なる大学院生の共同作業が生んだ成果」と評価し、「不規則でランダムな過程から規則的な構造を生成する原理の一つを提示している。遠い将来、工業技術に応用できる可能性がある」と期待を込めた。