奄美大島への大学設置・誘致の可能性を検討してきた有識者会議(座長・勝眞一郎奄美市産業創出プロデューサー)は2日、奄美大島総合戦略推進本部(本部長・朝山毅奄美市長)に意見具申した。中期的な取り組みとして観光や環境に特化した国際大学設立推進を促すと同時に、まずは複数の大学と自治体が連携した「共同キャンパス」の具現化を求めた。推進本部は近く、ワーキンググループ設置に向けた協議に入る。
大学構想は2015年度地方創生ワークショップでの市職員の提案が発端。奄美大島5市町村で組織する奄美大島総合戦略推進本部は16年度に可能性調査を行い、17年度は産業や大学、専門学校、高校、行政の各分野の委員13人で構成する有識者会議を計3回開催した。
具申した意見は①3年をめどとする短期的な取り組みとして共同キャンパスの設置②中期的(5~10年)な取り組みとして、国や県、市町村が協力した奄美群島への国際大学設立推進―の2項目。
事務局によると、14~16年度の3年間で延べ30大学の学生・教員1500人が島内フィールドワークを行った。
これを受け、有識者会議は「受け入れ体制の構築が肝要」と指摘した。共同キャンパスの実現に当たっては包括連携協定の締結大学などを中核大学とし、自治体と共同の設立・運営が望ましいとした。
機能として▽研究者対象の研究プログラム▽学生のフィールドワークを対象とした教育プログラム▽産官学連携や出前講座等の社会貢献プログラム―の例を示し、「複数の機能を持たせることで大学に類似した効果を得ることができる」と提案。拠点施設については奄美看護福祉専門学校の空き教室活用も検討課題に挙げつつ、総じて「スピード感を持って協議を」と早期対応を求めた。
将来的な大学設立に関しては「人材育成、産官学連携による地域の総合力向上、定住人口確保の観点から重要」と必要性を強調した。複数の大学が存在する県本土や沖縄県と比較して「知的、学術的な空白地帯が生じている」ことから、「国や県との統一した政策として進めるべき課題」と位置付けた。
勝座長は「日本に一つしかない、世界的に有名な大学をつくらなければいけない。会議で一致したのが国際大学の設立。伝統文化や世界自然遺産登録が予定される自然環境など、フィールドワークでも着目されている。まずは共同キャンパスなど知見を蓄積する場ができたら」と展望した。
具申を受けて朝山本部長は「提言内容を5市町村で共有しながら検討したい」と話した。