「第1回日本メディカルヴィレッジ学会・生涯活躍のまち共催シンポジウム」が10日、伊仙町のほーらい館であった。医療、介護関係者ら約270人が参加。基調講演や活動報告、パネルディスカッションを行い、「病気や障がいがある人も、地域(シマ)でともに支え合う社会を目指す」などと宣言した。
伊仙町は、がんなどの病気を抱えた患者やその家族が、最期まで安心して暮らせる場所づくりを目指し、患者や家族を含めたI・Uターン者の受け入れを視野に入れた「メディカルヴィレッジ(村)構想」を進めている。
今回、誰もが最期まで自立して生活できる地域共生社会づくりに向けた住民への周知啓発にもつなげようと同学会とシンポジウムを共催した。同学会は組織発足後、国内初の学会を兼ねた。
シンポジウムの第1部は「終末期医療と離島医療」がテーマ。南日本ヘルスリサーチラボの森田洋之代表、順天堂大学医学部の樋野興夫教授、あまぎユイの里医療センターの寺倉宏嗣院長が登壇した。
森田氏は2007年に財政破綻した北海道夕張市の医療現状について、病床数が大幅に減少したものの、減少前と比べ死亡率や死亡数、大きな変化はなく、予防医療で医療費が削減した事例を挙げ、「健康度と病床数、医療費に相関関係はない」と述べた。
寺倉氏は徳之島内の医療、介護施設が行っているみとりの現状を説明し、「みとりをするには多職種との連携や勉強が必要。終末期に対する患者の家族の理解が課題」と言及。がんで他界した妻をみとった経験から「一人で介護するのはきつい。周囲の協力やメディカルヴィレッジが必要」と訴えた。
第2部は「生涯活躍のまちづくり」をテーマに、大久保明伊仙町長ら4氏でパネルディスカッションを展開した。建築家の山下保博氏は地域包括ケアの拠点として奄美市笠利町に整備した「まーぐん広場・赤木名」を紹介し、「それぞれの個性を認めて役割を分かち合い、共有して住んでいく仕組みをつくることが大事」と述べた。
㈱三菱総合研究所プラチナ社会センターの松田智生氏は、都市部の社員が期間限定で地方で働く「明るい逆参勤交代構想」を提唱。「新たな人の流れをつくって地域が元気になり、地方創生と働き方改革を同時に実現させることができる」と持論を展開した。
大久保町長は「病気や障がいのある人も生き生きと暮らせるよう、徳之島から新しいモデルをつくりたい」と強調。来場者とともに「移住者も含めた、すべての人が幸せになれるよう全町民が主役となる地域(シマ)づくりを目指す」「町の宝である長寿・子宝を守り、地方創生を推進する」とも宣言して閉会した。