沖縄の音楽家、ジョージ・ショウこと上地昇さん(71)がこのほど、奄美ゆかりの作家・島尾敏雄の代表作「死の棘(とげ)」をオペラ化した。楽譜と自身のエッセーを1冊にまとめた「オペラエッセー集 トシオとミホのものがたり」(NPO伝統と創造の会)を今年7月出版した。右から開くとエッセー集、左から開くとオペラの楽譜というユニークな構成となっている。
上地さんは生前の島尾敏雄と交流があり、40年ほど前から「死の棘」のオペラ化を考えていた。島尾本人の希望もあったという。テーマの複雑さからなかなか実現できずにいたが、島尾敏雄が逝去した年齢を自身が超え、また、島尾敏雄生誕100年を迎えたことから一念発起して書き上げた。
オペラは序章から全6幕で、演者はトシオ(ハイバリトン)とミホ(ソプラノ)の2人。これに舞踏家の演舞が加わり、演者の陰で男女のナレーションが物語を進行する。楽器群は、フルートなどの管楽器3種とピアノやバイオリンなどの弦楽器6種にドラム。セミプロやアマチュアを対象にした作品で、主に高校・大学の音楽部や演劇部など舞台芸術の基礎を学ぶ初心者向けに構成されている。
エッセーの中で上地さんは「死の棘」について「この小説のテーマは、一言でいえば男と女の究極的な『愛』の問題」「オペラの素材としては『死の棘』は最も不向きである。(中略)ところが、ある日ふっと思いついた。通常の既成概念としてあるオペラを壊せばいい」とつづる。
上地さんは「奄美で生まれたこの物語をぜひ奄美で上演したい。いつになるか分からないが必ずやりたい」と語った。
「オペラエッセー集 トシオとミホのものがたり」は沖縄県内の書店やコンサートホールなどで販売予定。定価1800円(税抜き)。問い合わせは080(1779)3313NPO伝統と創造の会。
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ジョージ・ショウ(上地昇) 1947年、沖縄県宮古島生まれ。那覇高校卒業後、フィリピン国立大学・大学院で民族音楽学を研究。舞台音楽をはじめ、ドキュメンタリー番組や映画音楽の作曲を数多く手掛ける。代表作に交響詩「あけもどろ」など。