奄美市名瀬浦上町の有盛神社にあったリュウキュウマツの巨木「ウンテラ松」の樹齢が180年余りとみられることが、名古屋工業大学の庄建治朗准教授らの研究で分かった。松くい虫被害で枯死した松の年輪から解析し、千葉県内で今月開かれた日本地球惑星科学連合の学会で発表した。庄准教授は「奄美大島は松の大木が多く残っているが、(松枯れで)近い将来、長樹齢の樹木がほとんどなくなってしまう恐れがある」と指摘している。
有盛神社は平有盛を祭った平家伝説にまつわる神社。神体の仏像と神社一帯の小高い森は市の文化財に指定されている。「鎮守の森」として地域住民に親しまれ、頂上付近のウンテラ(上の寺)にある松の大木は「600年松」とも呼ばれていた。
ウンテラ松は2013年に枯死し、16年秋に伐採された。庄准教授らは切り株と地上高数㍍にあった樹幹部分から標本を採取。胸高直径は175㌢で、184本の年輪を確認した。松は江戸時代後期の1830年ごろに植えられたと推測される。
庄准教授らは、奄美大島で松枯れによって枯死したリュウキュウマツの年輪の調査を17年3月から、奄美市立奄美博物館の協力を得て行っている。これまでに有盛神社のほか、奄美市笠利町の県立大島北高校や赤木名小学校でも松の標本を採取し、年輪を測定して過去の気候環境の変化について調べている。
奄美博物館の高梨修館長は「南西諸島では巨木の情報が少なく、調査が進んでいない。地域の人が大事にしている松が枯れるのは残念だが、年輪年代学の最新情報に役立つことが分かった。情報を集約して研究に協力していきたい」と話した。
庄准教授は「南西諸島のような亜熱帯地域の樹木は、本土では休眠期となる冬季周辺の気候条件が年輪に記録されている可能性があり、分析を進めることは重要だ」としている。