環境省は、2024年度を初年度とする奄美希少種3種(アマミノクロウサギ、アマミヤマシギ、オオトラツグミ)の保護増殖事業10カ年実施計画を策定し9日、公表した。3種が「自然状態で安定的に存続できる状態とする」ことが目標。前実施計画(14~23年度)の進展状況の評価結果なども踏まえ、ノネコ対策など残る課題への対応や目標達成の評価基準などを盛り込んだ。いずれも近年、生息数の増加や分布域の拡大などが確認されており、10年を待たずに事業を終了することも見据える。
計画は種の保存法に基づき策定。3種は特に優先度の高い種として保護増殖事業の対象となっている。
同省ではこれまで、アマミノクロウサギについて、決まったエリアでふんを数える調査や自動撮影カメラの記録で生息状況を把握。ほか、交通事故対策なども実施してきた。
アマミヤマシギは、林道を低速で走行しながら出現数や行動を記録する「夜間ルートセンサス」や電波発信機を装着し行動を追う「ラジオテレメトリー調査」を実施。オオトラツグミは、NPO法人奄美野鳥の会が繁殖期に実施する「さえずり一斉調査」の結果や繁殖行動の観察などで生息状況を把握してきた。
一方、保護上の問題点として、アマミノクロウサギとアマミヤマシギに対しては、ノネコなど外来種の存在や交通事故の発生などを上げ、オオトラツグミについては、生息密度や分布の把握や継続性のある調査手法の確立を挙げた。
今後は、引き続き生息状況の把握を推進するほか、マングースの根絶確認と再侵入防止に向けた監視体制の構築や、傷病個体の救護・放獣体制の再検討―などを推進する。
評価基準は、①外来種対策②交通事故対策③開発の影響④生息状況の把握―の四つの観点で設定した。
大和村にある同省奄美野生生物保護センターの鈴木真理子希少種保護増殖等専門員(42)は「3種とも絶滅危惧種の基準を外れるくらいになってきている。残る課題に対応し、保護増殖事業から〝卒業〟できるよう取り組んでいきたい」と話した。
計画の詳細は、環境省沖縄奄美自然環境事務所のウェブサイトで確認できる。https://kyushu.env.go.jp/okinawa/press_00090.html